2018年05月02日

イタリア音楽と映画の魅力

 5月の連休となると海外に行きたいという気持ちがむくむくと頭を持ち上げる。イタリアは私のお気に入りの国だ。ミラノやローマのような大都市以外に、フィレンツェ、ベネチア、ボローニャ、シエナ、シラクーサ、など中小の都市がとても個性的で魅力的だ。友人のシエナ大学医学部耳鼻咽喉科教授、パサリ医師が学会を主催する毎にシエナや近郊のフィレンツェなどを訪れ、その魅力にはまってしまった。

 パサリ医師は「典型的なイタリア気質」で、楽天的であまり物事を深刻に考えない傾向があるようだ。シエナ大学で主催された彼の学会では大学の教室を使い、しかもマイクもスクリーンもなしで、大声で話し教室の壁にスライドを映写する始末。学会費用の節約なのか、発表できれば良いんだよ、というシンプル至極の考え方なのか、まあ両者の可能性が妥当だろう。学会の合間に大学附属病院を見学してまた驚いた。病院ロビーにバーがあり、そこではしっかりお酒(ワインやウイスキー)が置かれている。パサリ医師に患者もここで飲酒するのかと聞くと、何をおかしなことを聞くのかという顔をして、「当たり前だろう」との返事。イタリア人にとってお酒は病院のカフェでコーヒーを飲むのとほとんど変わりはないのかもしれない。

 しかしこのイタリア人気質というのは少しステレオタイプのようで、イタリア人にとって迷惑かもしれない。もう一人の友人で、ニューヨークのバッファロー小児病院の研究仲間であったロベルト・ガロファロ医師は少し違っていた。彼は研究者として「イタリア人気質」というような話題はあまり好きでないと良く言っていた。しかしミラノ出身の小児科医のロベルトは、とてつもなく社交的で、特に女性に対する社交性は私だけでなく家内にとっても驚きであった。私は病院の研究室で彼と同室だったが、毎朝ラボの女性がほとんど全員(年齢関わらず)、彼のところに挨拶にきてハグとキスをする姿は私にとって最初のカルチャーショックであった。女性は皆友達という考え方はやはり楽天的なのかもしれない。彼はサッカー王国イタリアで、幼少の頃からサッカーではなくテニスに熱中しプロのコーチの指導を受けた本格的なテニスプレーヤーだ。バッファローの街は緯度が高いため夏はとても長く、夕方の6時過ぎから9時近くまで戸外のテニスコートで一緒にプレーを楽しんだ。私にとって学生時代以後もっとも熱心にテニスを楽しんだ時期だ。彼は今はテキサス大学ガルベストン校の免疫アレルギー学の教授となっており、以前ほどテニスはできないと言っていた。

 イタリアびいきの私のお気に入りの音楽と映画を紹介しよう。休日に良く聴くジャズのなかでビル・エバンスとともに好きなのはイタリアを代表するジャズピアニストのジョバンニ・ミラバッシだ。叙情的でメロディックなアドリブは一度聴くととりこになる。ジャンルは異なるがもう一人好きなイタリア人音楽家はアンドレア・ボチェッリだ。彼は盲目の弁護士として活躍していたが、音楽的な才能を世界的なテノール歌手であるルチアーノ・パヴァロッティに見い出され、テノール歌手として世に出た異色の音楽家だ。彼はクラシックオペラだけでなく、歌唱法が全く異なるポピュラー音楽でもすばらしいビロードの声を楽しませてくれる。声楽専門家の中でも彼の歌唱のバリエーションの広さは極めて評価が高い。

 イタリア映画もまた魅力が一杯だ。古い映画では「道」がもっとも好きだ。比較的最近では「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」「鑑定士と顔のない依頼人」などに加えて、「マレーナ」も第2次世界大戦時のシチリア、シラクーサを舞台にした映画で、お気に入りリストに入っている。早熟なレナート少年が不遇の女性、マレーナへ寄せる淡い想いをエンリオ・モリコーネの素晴らしい音楽にのせて、ノスタルジックに描いた名作である。

 写真:寄り道ヨーロッパ  

ドゥオーモ広場の夜(シラクーサ):映画「マレーナ」のなかで、主人公のマレーナが周囲の好奇の目にさらされて、このドゥオーモ広場を歩くシーンが印象的であった。

posted by Nobi Yamanaka at 11:36| Comment(0) | 日記

2018年04月29日

年を重ねることは老いるだけではない

たくさんの人々が、良く老いるということを知らずにいる。秘訣はどう若返るかということではなくて、いかに生き生きとし続けられるか、ということなんだ。(ブルーノ・ムナーリ、イタリアのグラフィックデザイナー)

この4月に誕生日を迎えまた年を重ねた。不思議なことに私の海外の友人、Alan Lupin(カナダ)、David Nadar (スイス)は皆4月生まれだ。なんとDavidは誕生日もまったく同じなのだ(私より少し若いが)。したがって、4月には誕生日祝いのメールをいかに友人よりも早く適切な時間に送るかすこし気に病む。しかし時差の影響で私の誕生日が早く来るので、どうしてもカナダやスイスからのメールが早くなるのだ。彼らのメールが届いてから慌てて誕生日メールを送ることも多い。以前は誕生日カードを航空便で送るので、多少の日時の猶予があり、早く着いたり、万が一遅くても郵便事情で勘弁してね、と当方で勝手な言い訳を考えられたのだが、今は瞬時に届くe-mailの時代だ。そんな言い訳はきかない。Alanは私のカナダ外科レジデント時代の恩師なので、もう30年以上のつきあいとなる。子ども達も留学時代に奥さんにピアノを習ったりし、帰国後も家族ぐるみのつきあいを続けており、メールには日々の変化などを数枚の写真とともに綴ってくれる。Davidはニューヨーク時代の研究仲間(小児科医)で、なかなか理論派なので人生の意義などメールもやや高尚となる。スペインのバロセロナ出身なのだが、文学的な英語を駆使した文章が多く、ときどき解読に悩むことが少なくない。

毎年誕生日を迎え、年を取る毎に若い頃の野心的な夢はだんだん小さくなっていき、夢をみることすら忘れてしまうのではないかと恐れる。一方、年を重ねることは山を登ることと同じで、頂上に近づくほど見晴らしが良くなり、物事がよく見えるようになるはずである。しかし同時に見たいものだけではなく、見たくないものも視界に入るようになる。年齢を経て人間関係がおかしくなることがあるのは、「見えすぎるようになる」ことも一因かも知れない。まあ、どんなことがおころうと、「想定外が起こるから人生は面白い」と腹をくくって生きることが楽しく生きるコツかも知れない。

321日の春分の日、鎌倉付近は大雪であったが、葉山の神奈川近代美術館で99才の日本画家、堀文子の白寿展覧会を楽しんだ。「毎日が初体験だから人生は楽しいの」と100才近くまで天真爛漫に絵筆を振るっているのはなんとうらやましいことか。

20歳だろうが80歳だろうが、とにかく学ぶことをやめてしまったものは老人である。学び続ける者は、みな若い。人生において一番大切なことは、頭を若く保つことだ。』(ヘンリー・フォード)

写真:鎌倉逍遙 (Leica monochrome Summicron 50mm)
鎌倉のお気に入りカフェ(松原庵カフェ)―オリジナルブレンドの珈琲とマスター手作りのスコーンが絶品―
posted by Nobi Yamanaka at 00:16| Comment(0) | 日記

2018年04月12日

「折れない心」

藤沢御所見病院院長 山中 昇

病院にはすばらしいスタッフが揃っていますが、皆がうまくまとまるためにはお互いのリスペクトとサポートが欠かせません。患者さんを支え、スタッフ同士が支え合うためには、各々が挫折や苦難を乗り越えられるように「レジリエンス」を鍛える必要があります。

「レジリエンス」とは
人生にはレジリエンスが必須です。日本語で「復元力、折れない心」と訳される言葉です。人生にはその大小に関わらず挫折や苦難はつきものです。多くの方が「今年一年の目標」、「人生の目標」・・・と目標を定めて生活をしていると思いますが、この目標が達成できない、あるいは達成が危うくなると挫折感を感じますね。さらに自分や身内の方が病気になった際に、その病気が非常に重く難治性であったり、悪性(癌)の場合には「心が折れそう」になりますね。身内の方の死に直面した際には心が折れてしまいます。このような人生の挫折や苦難から立ち直るためにはどうしたらよいのでしょうか。
 昨年ベストセラーとなった「オプションB」(シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著)はこの折れた心の回復について大変示唆に富む内容です。すでにお読みになった方も多いと思いますが、少しご紹介したいと思います。
著者のサンドバーグ女史は米国のIT企業フェースブックの執行役員ですが、旅行先で夫を心筋梗塞でなくします。最愛のパートナーを突然失い人生のどん底につき落とされてしまった著者が、親友の心理学者、グラント博士の助言に従って考え、行動するにつれて徐々に折れた心が回復していくプロセスが書かれています。
 人が失敗や挫折などの苦難から立ち直る際に次の「3つのP」が大きなブレーキとなるようです(心理学者 マーティン・セリグマン)。
1.自分が悪いのだと思うこと(Personalization 自責化)
2.あるできごとが人生のすべてに影響すると思うこと
  (Pervasiveness 普遍化)
3.あるできごとがずっと続くと思うこと(Permanence 永続化)
本著ではこの3Pをとてもわかりやすく解説しています。つまり「すべてがサイテーで、このサイテーなできごとが自分のせいで、何もかもがサイテーで、この先ずっとサイテーだ!」という考えが、頭のなかをぐるぐる回り続ける状態が折れた心のままになってしまう最大の原因だと教えてくれます。
 

タイトルの「オプションB」とは次善の選択肢の意味です。

著者の今までのバラ色の人生が「オプションA」(最良の選択肢)であり、それが夫の死により突然失われ「オプションB」を選択せざるを得なくなった場合に、ブレーキとなる3Pからどのように脱却し折れた心を回復していったら良いのでしょうか。
 著者はレジリエンスとは「逆境への反応の強さと速さであり、私たちはそれをつくり上げることができます。それは気力を持つなどということではありません。それは、気力の周りにある筋肉を鍛えることです」と述べています。この筋肉を鍛えることが回復力の根源となるのです。この筋肉を鍛えるために、フェースブックに自分の苦悩をオープンに打ち明け、職場に復帰し仲間と接する時間を増やして「自分は一人ではないのだ、ここが自分らしくいられる場所だ」と実感していきました。
 しかし、最後まで残ったのが「この苦悩が永遠に続くという思い」だったのです。「苦しみは時間が解決してくれるよ」とよく言われますが、なかなかそうは上手くいかない場合が多いと思います。著者のサンドバーグは2つのことによってレジリエンス筋肉を鍛えて、苦悩の永続化を乗り越えられたと述べています。この2つとは
「感謝」と「喜び」です。
共著者のグラント博士が、著者に毎日3つの喜びの瞬間を書き留めるよう指導しました。喜びを書き留めることを続け、徐々に内面的な心の喜び、平穏が得られるようになり、そのことに感謝できるようになったと述べています。この喜びと感謝の気持ちが「苦悩の永続化」から著者を救ったと思います。
 人はだれでも「オプションA」(最良の選択肢)を選びたいと思いますが、なかなかそうはいきません。私たちは回復力を鍛えて「オプションB」,あるいは「オプションC」を選択して人生を歩んでいきたいですね。人生は短く、無駄な日々はないからです。

最後に私がレジリエンスを鍛えるために大切にしている「3KAN」を紹介します。
1.あらゆることに関心(KANSIN)を持つこと、
2.感動(KANDO)する柔軟性をもつこと、
3.そして感謝(KANSHA)する心をもつこと
posted by Nobi Yamanaka at 14:56| Comment(0) | 日記